認知症と
その介護
柿谷 孝子
須崎キリスト教会牧師
ベテルホームすさき施設長
高齢社会となった長寿国日本は真に介護社会とも言える程、生活と切り離せなくなっているのではないでしょうか。”子がいれば親がいる”介護は当然始まってきます。その中身は神を愛し、人を愛することから始まると思います。聖書の中に大切な戒めがあります。『心を尽くし、思いを尽くし、知力を尽くして、あなたの神である主を愛せよ。』、『あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ。』、『あなたの父と母を敬え。』等とあるように、神と人を愛すること、敬うことが大事な戒めとなています。 介護放棄、育児放棄をする人も少なくない今日ですが、親がなりふり構わず子育てしてきたように、介護においても常識も世間体も慣習も通用せずその個に向き合って対応しなければならないのです。最も大切なことはその人を愛すること、受け入れること、受け止めること、今のその現状を理解すること。体裁よりも何よりもその人のニーズを優先すること。常識も規則も一先ずそこに置いてその人の訴え、要求、困りごとに対応することが大事となります。人は老若男女を問わず自分が大事にされている、尊ばれている、わかってくれていると思えば心は穏やかになり、また嬉しく、そして満たされるのです。小さな言動でも自分が疎かにされているのを感じ取れば、寂しくなって周辺症状(不穏な行動)が出てきます。
認知症の方は言葉が少なくなり、言葉での表現が難しくなりますが感情の部分では衰えていませんので介護者の事をわかっていないようで意外としっかりわかっておられます。つまり疎かに扱えないということです。心にとめておきましょう。 ご本人にしてみれば、今まで出来ていた事が出来なくなった、役に立たなくなった、つまらない者になったと喪失感を覚えているのです。そこへ、『○○さん、こんなことしたら駄目じゃない!こうするんでしょ!』等と頭ごなしに言われることがあるとすればご本人の自尊心を傷つけてしまうのです。恥もかかせないようにしましょう。いろんな事例がありますが例えば相手を傷つけないようにして直したい時『○○さん、上手にできましたね。凄い!、、、ここをこうしても安全かもしれませんね。』また自分は駄目だわからなくなってと落ち込んでいるような時『私もこの頃○○さん以上に分からないことが多くなってびっくりするんです。でも、いろんな人に助けてもらっています。○○さんも今までいろんな人を助けて来たのだから今からは助けてもらってもいいんじゃないですか?。』等と対応することもあります。すると安心したようにニコニコ顔にかわってきます。
介護のポイントとして
① 急がせない (理解力が乏しくなっているのでゆっくり対応する)
② 説得しない (言葉でまくしたてたり、ねじ伏せたりしない)
等も大事なことです。
では、“認知症って何?”というところから見てみましょう。
厚生労働省の最近の情報では、2025年には認知症患者数は730万人前後に達し、65歳以上の高齢者の約4人に1人を占め、2060年には約3人に1人が見込まれるとの事。認知症は特別な人に起こる特別な出来事ではないことだと知っておきましょう。
先ず、<老化と認知症の違い>
老化と認知症は混同されやすいのですが、両者にはハッキリと違いがあります。老化による物忘れは、一過性の物忘れ。自覚がある。進行しない。生活に支障はない。に対して認知症の症状は、体験したことをすべて忘れる。自覚が少ない。進行し、変化する。生活に支障をきたす。等のちがいがあります。
<認知症の原因となる疾患>
- ①アルツハイマー型認知症
(女性に多い) -
これは、脳の神経細胞の脱落、脳細胞(海馬部分)の死滅で脳が萎縮する。一般の人も脳細胞は加齢と共に減るが、アルツハイマーの場合は病的な速さでおこる。原因は不明。病気の初めはゆっくりして気づかないことが多いが「これはおかしい」と受診した時には結構進行していることが多い。
- ② 血管性認知症
(男性に多い) -
脳卒中や脳梗塞が原因で起こる認知症。脳の障害や、その部分により、症状に個人差がある。涙もろくなったり、感情面での障害も見られる。
- ③ レビー小体型認知症
(男性に多い) -
特殊なタンパク質が脳や脳幹に集まり、神経細胞が減って認知症状を起こす。幻視が見える(虫、蛇がいる、知らない人が部屋にいる、竹の子が生えている、亡くなった人がいる)。妄想が出る(自分はまだ働いている、子供も小さい等)。手が震える。動作が遅くなる。筋肉がこわばる。身体のバランスを取るのが難しい。食欲なく、眠れない等の症状が増える。
- ④ 前頭側頭型認知症
(若い人にも起こる) -
脳が委縮して起こる認知症。何事にも無関心。感情も乏しく、意思疎通が難しくなる。自分の思ったように行動する。抑制が出来ず衝動的に行動する。悪気なし。社会性の欠如。万引きや交通ルールの無視等が起こる。常同行動をとるようになる(同じ行動。同じ物を食べる。同じコースを散歩する等)。時刻表的生活と呼ばれることもある。
≫ 次回は認知症の予防について見ていきましょう。
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コメント一覧 (1件)
拝読させていただきました。心身ともに健やかに年を重ねていきたいと願っている後期高齢者です。夫婦ともにそれなりの生活ができていることを感謝していますが、これからのことはシナリオが描けません。介護するにしてもされるにしても重い課題です。施設に入っている90歳超のおばさまに面談しますと、私の名前が出てきません。が、よく食べて、よく休み、施設の皆様にあまりご迷惑をかけずに穏やかに生活しているので、認知症かと思いますが、これでいいなと思っています。自分がどの様になっていくのかを思いますと、次回のテーマがとても気になります。予防できるものであれば労をいとわず励みたいと思います。柿谷 孝子先生 第一回目の読み物ありがとうございます。さらに期待が高まります。