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「愛を知る喜び〜親と子のこころ」②

「愛を知る喜び〜親と子のこころ」②

前田 利江 姉
心理カウンセラー(臨床心理士、公認心理師)

第2回「岩の上に立てられた家」

 昨今、自己肯定感という言葉をいろいろなところで目にします。自己肯定感は簡単に言うと、「わたしはわたしで大丈夫」という自分に対する肯定的な感覚のことです。子どもの頃に、親から無条件の愛情を受けることでその土台が作られます。ここでいう無条件とは、ただ自分の子どもであるというだけでかわいいといった意味と思ってもらえたらよいでしょうか。お母さんは、病院の中で生まれたどの赤ちゃんよりも自分の赤ちゃんがかわいいと思いますよね。そのような親からの無条件の肯定がその後の成長の土台となります。親バカ万歳!です。

 子どもが成長して行動範囲が広くなっていくと、外の世界で不快なことにぶつかることも多くなります。そうすると泣きながら親の膝下に戻り、抱っこして慰めてもらう。そして、安心してまた外に出ていくということを繰り返します。ある子どもの集まりで、素敵なお母さんに出会ったことがあります。出されたおやつがあっという間になくなってしまい泣いていたお子さんを、そのお母さんはただ黙って微笑みながら落ち着くまで抱っこしていたのです。自分だったら、どうしただろう?「もう少し出してくれたらよかったのに」と思ったり、「もうないからしょうがないでしょ」と説得したりしたかも。子どもが立ち直るまで、ただ黙ってあたたかく包んであげること、それが子どもの本当にしてもらいたいことなのでしょう。そのように自分を受け入れてくれる人がいることが大切なんですね。

 いつも子どもの笑顔を見ていたいと思うのが親心ですから、子どもが泣いたり怒ったりするのを見るのが辛くて、つい先回りをして失敗しないようにしてしまいがちです。そして、子どもが言うことを聞かずに失敗した時には、「だから言ったじゃない。言うことを聞かないから」と責めてしまったりもします。けれども、そんなふうに言われた子どもは「助けがないと自分は失敗する」と感じて自信をなくしてしまうかもしれません。放蕩息子の父親(ルカ15:11~32)のように、子どもが失敗することを心配しすぎないで送り出し、もし失敗して帰ってきた時にはあたたかく迎えてあげる親になれたらなあと思います。失敗のときこそ、子どもへの愛を伝える大きなチャンスなのです。失敗を責めずに応援してくれる大人がいたら、子どもはどれだけ勇気づけられることでしょう。 

 思春期は、一般的に自己肯定感が低下する時期です。親からの自立に伴って友達や周りがどう思っているかにとても敏感になり、それまでに築いた自己肯定感の土台が揺らいでしまいます。場合によっては、一旦、親や支援者が「そのままでいいよ」と受け止めて、自己肯定感の土台を立て直す作業が必要になります。そんな時、効果的なのは子どもの話を聞くこと、特にその子の好きなものの話を聞くことです。ゲームの話などチンプンカンプンかもしれませんが、ただ聞いているだけでもいいのです。子どもは自分の好きなことは喜んで話してくれます。人の話を否定しないで聞くということはその人を肯定することにつながります。「ただ聞くだけ?」と思うかもしれませんが、それがカウンセリングの基本でもあると思っています。自分の好きなアニメやゲームの話を担任の先生が聞いてくれることで、安心して学校に来られるようになる子どももいます。

 ここで聖書に目を移してみると、クリスチャンにおける自己肯定感の土台は、言わずもがな神様の愛だということがわかりますね。神様はわたしたち一人一人を大切な神様の子どもだと言って下さいます。神様の愛は無条件だから、変わることがなく、無くなることがありません。けれども、「こんなわたしでいいのかな?」「信仰の成長が無いわたしはダメだ」という葛藤を抱えているクリスチャンも少なくないと感じています。神様は、わたしたちの存在自体を肯定して下さると同時に、わたしたちの成長に期待し、それぞれの成長の過程を忍耐強く見守って下さっているのだと思います。「隣人をあなた自身のように愛せよ」なんて、正直できるはずがないとも思うのですが、神様はこんなにも大きな期待を寄せて下さるのかと驚くばかりです。

 わたしという存在を認め、成長を信じて期待して下さる神様の愛という揺るぎない岩の上に、自分というユニークな家を立てていきましょう(マタイ7:24~27)。お父さん、お母さんは、周りと比べてお子さんの成長が不安になることもあるでしょう。でも、「今はまだ難しいけど、頑張っている」と周りが認めてくれれば、自分を責めずに前を向いていくことができます。「自分は信頼されている」と自信をもつことができたら、きっと自分らしく歩んでいくことができると思います。どうぞ、お子さんの成長を信じて、ともに祈っていきましょう。

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