MENU

「愛を知る喜び〜親と子のこころ」⑤

「愛を知る喜び〜親と子のこころ」⑤

前田 利江 姉
心理カウンセラー(臨床心理士、公認心理師)

第5回「悲しむ者の幸い」

 子ども達がまだ小学生だった頃、我が家に子育て中の知人、友人を招いて、聖書から子育てのお話をしていたことがあります。そして、その案内のために「みことば通信」というトラクトを作り、子どもとのやりとりを綴った記事を載せていました。久しぶりにそれらを読み返してみたのですが、泣いたり、喧嘩したりのとても穏やかとは言えない毎日の中にも、ちょっとホロリとするオチや思わず笑ってしまう子どもとの会話が溢れていました。

(みことば通信. 平成11年7月25日号より)

『「子どもたちを怒らせてはいけません。むしろ、主の教育と訓戒によって育てなさい(エペソ6:4)」ああ、今日も子どもを怒らせてしまったなと思うことがあります。勉強がわからなくて子どもが怒っている時・・・子どもなりに自分の怒りと戦っているのだと思います。頑張っているなと静かに見守り、却ってなぐさめてやるべきところを・・・ついうるさくなって「そんなことがわからないの?」「そんなやり方じゃダメだよ」この言葉で子どもは静かになるどころか、さらに激しく怒り出すのです。「じゃあ、お母さんがやればいいじゃん」あーあ、やってしまった。本当に怒らせてしまったな。つまり、子どもの自尊心を傷つけてしまったわけです。 

 子どもを叱りつけてしまった時、特にそれが夜で、泣き寝入りさせてしまったら、親のわたしも最悪の気分です。「憤ったままで日が暮れるようであってはいけません(エペソ4:26)」なんとか寝る前にはあやまり、お布団の中で仲直りの抱っこをします。それができないでいる時、娘に言われてしまいました。「寝るまでには仲直りするんでしょ、お母さん!」』

 毎日が楽しいことばかりだといいのですが、なかなかそううまくはいきません。1日の中にも不安な気持ちや悲しい気持ち、怒りなど、様々な出来事や気持ちが入り混じっているのが普通ですね。そんな中、わたしたちはどうしてもネガティブな気持ちに強く心をとらわれてしまいがちです。それは、実はそのような負の感情がわたしたちの身を守る大切な働きをしているためだとも言われています。例えば、危険を感じてとっさに逃げる時には、怖いという感情が自身を守る大事な判断をしていると考えられます。

 ここで基本的な4つの気持ちについて、それぞれの働きを考えてみましょう。

怒り:自分の身を守るために戦う、不公平にならないようにする

友達と喧嘩になる時、自分を守ろうとしているとも考えられます。

恐れ:危険なものから逃げる、変化に備える

人通りのない暗い道は危険ですからこわくて歩きたくないですね。

喜び:積極的な行動を生む

好きなことはどんどん挑戦できますね。

悲しみ:周りに助けて欲しいと知らせる、涙にはストレス発散やリラックス効果がある 

 ディズニー映画のインサイドヘッドでも悲しみの大切さが描かれていました。大切な人を亡くしたときの心のケアはグリーフケアと呼ばれ、悲しみの感情の自然な表出に寄り添います。聖書にも「悲しむ者は幸いです。その人たちは慰められるから」と書かれているのを思い出します。このようにネガティブな気持ちにも大切な役割があり、ネガティブな気持ちを閉じ込めて抑制してしまうことは、却って精神的なバランスを崩してしまうことにもなりかねません。

 とは言っても、感情に振り回されてしまうと辛いものです。ネガティブな気持ちが困るのは、気持ちが暴走する時です。例えば、怒りが暴走して・・・暴力、暴言になってしまうと、これはNGです。子どもを叱る時に子どもの人格を否定したり、自尊心を傷つけるような言い方をしてしまったりすると、子どもは自分を守るために怒りや反抗で応じてきます。また、恐れが暴走すると・・・心配しすぎて、何も行動できなくなってしまうかもしれません。人からの評価や人の目を気にしすぎるといった社会不安がひどくなると、外に出ることが怖くなってしまう場合があります。

 では、感情を上手にコントロールするにはどうしたらよいのでしょうか。感情は自分の身を守るために素早く物事に反応するのですが、脳には感情を作り出す部位とは別に、冷静な判断をして感情を沈める働きをする部位があるということです。例えば、社会不安の治療では、怖くてもあえて少しずつ外に出ていくことで、偏った認知を変えていく治療方法が確立されています。

 「いつも喜んでいなさい」「すべてのことにおいて感謝しなさい」などなど、聖書の言葉は、ネガティブに偏りやすい感情をコントロールする力を与えてくれます。時に、神様は聖書の言葉を通してわたしの心に語りかけ、自分では見えなかった本当の気持ちに気づかせてくださいました。振り返ってみれば、子育て中は感情的になってしまうことが多かったけれど、そんな慌ただしい毎日の中にみことばがあり、神様からの慰めがあったのだなあとしみじみと思い出されます。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

お友だちへのシェアにご利用ください!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

感想・コメントはこちらに♪

コメントする