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「美しく、強く、しなやかに-イスラエルの女性たち-」 ⑧

ラハブ―神を信じて用いられた知恵ある行動派

ラウジー満世

中央聖書神学校教師

サクラ・キリスト伝道所牧師

 荒れ野を40年間旅してきた後に、新しいリーダーであるヨシュアのもとで約束の地カナンに入るためにイスラエルは多くの戦いを経験します。その最初の戦いではその土地に住む遊女が大きな役割を果たしています。彼女はエリコの町の片隅で、人々から後ろ指をさされる生活を送っていたのです。私たちがこの時代に生きたイスラエルの民であったなら、まさか神が外国人でしかも罪深い生活をしているこのような人を用いると期待できたでしょうか。しかしエリコとの戦いで重要な働きをしたのが遊女ラハブです。彼女は後に新約聖書では信仰の偉人としてごくわずかな女性と共にその名が挙げられているのです。

 ラハブはエリコの町の城壁の壁面の内側に住んでいました。エリコは約束の地カナンに入って最初にイスラエルが戦った町でした。城壁の回りを行進し、最後に皆で鬨の声を上げると壁が崩れたというあの印象的な大勝利を思い起こされるでしょう(ヨシュア記6章)。約束の地に入るための最初の町を攻め落とすことは、イスラエルの人々の信仰を強めるためには大切なことでした。この重要な戦いに先立ってヨシュアが送った二人の斥候がエリコで出会ったのが遊女ラハブでした。

 正直なところ、イスラエル人にとってラハブは神の選びの外に居る人ですし、さらに律法よれば罪深い生活をしているのです。ですからこのような人との接触は避けようとするでしょう。神の律法を固く守って、神に喜ばれるきよい生活を続けようとする人々は、なおさら避けようとするでしょう。しかし神の約束実現のためにラハブは大きな役割を果たします。

 イスラエルの二人の斥候が遊女の家に入り、泊まりました。ラハブはこの二人がエリコの王が遣わした追手に追われる者であると知りながらも、迷いなく彼らをかくまい、したたかにも遊女としての立場を巧みにほのめかしながら役人を煙に巻いてしまいます。ああ、確かに二人来たけれども、私の客ですし、素性も行先も知りません、もう出て行きましたよ、、、、という具合に。自分の客だとほのめかすときに大胆にも性的な関係のために訪れたのだと理解できる、ぎりぎりの言葉を使って二人を守ったのです。何と大胆で機転の利く女性でしょうか。

 追手を追い払ってからラハブはかくまっていた二人を逃がします。なぜエリコの住民なのに自分の町を襲う敵を助けたのでしょうか。ラハブはイスラエルの神こそ天地の神であると認めていたのです(6:11)。エリコの住民はエジプトの奴隷に過ぎなかったイスラエルがその神の不思議な力によって干上がった海を渡って生き延びたことや二人の王を滅ぼしてしまったとことなどを聞いていました。彼らはイスラエルが普通ではない力で守られて荒れ野を渡ってエリコに迫っていると聞いて怖がっていました。もちろんラハブも町の住民と同じようにこれらの出来事について聞いていました。しかし彼女は震えおののいてはいませんでした。ラハブは主がどのように敵を征服してイスラエルを守ったかを聞いて神を認めたのです。迫り来る災禍を理解して今度は自分が滅ぼされると怖がるのではなく、背後におられる神の力を認め、イスラエルの神こそが天地の神だと受け入れることが出来たのです。それは彼女が事実の報告を聞き、本質を見極めるために考え、悟る知恵を働かせたからでした。


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